2024年度グッドデザイン賞受賞ザ・パークハウス 南麻布
2024年10月16日
「ザ・パークハウス 南麻布」の一部住戸では、階高を約4.5m設け、空間を立体的に使うことで、入居者好みに住まいの在り方をカスタマイズすることを可能にし、プライバシー性にも配慮しながら、入居者同士が繋がりあうプランを実現しました。
一般的なマンションで採用される
「田の字プラン」の課題
集合住宅において多く採用される、効率化を追求した田の字型の間取りは、実際に生活する居住者目線では各居室が孤立し居住者同士が繋がる機会がなく、生活の在り方も固定化されてしまいます。
例えば3人家族とすると、玄関側に夫婦の寝室と子ども部屋、バルコニー側にリビングと書斎とするケースが多く、画一的なライフスタイルになりやすいです。玄関側はリビングから隔離されているため、子どもが成長するといつ帰宅したかもわからないということがあります。
プライバシー性にも配慮しながら各エリアの気配を感じられる、
入居者同士が繋がりあう新しい間取り。
従来の田の字型の間取りの課題に対して、間取りによって一体感を備えつつ、かといってオープンにしすぎない方法はないかと検討を重ねました。その結果、空間を立体的に使い、高さを設けることで解決できると考えました。
4.5mの階高を確保し、1層、1.25層、1.5層のレイヤーにより、入居者によって住まい方をカスタマイズでき、プライパシー性にも配慮しながら各エリアの繋がりを感じられる新たな間取りをデザインしました。
1層
4.5mの階高を確保することでマンションでありながら吹き抜けの開放的なリビングを実現しました。70CLタイプには寝室となる居室も配置。吹き抜けのリビング・ダイニング・キッチンからそれぞれの部屋の居住者と繋がりを生み出すことができます。


ストレージ
ストレージは災害用の備蓄などの収納としても、ペットスペースとしても、小さなお子様の遊び場スペースとしても使用できます。


1.25層
書斎にも、趣味スペースにも、寝室にも、適度にリビング・ダイニングと繋がったカスタマイズしやすい1.25層。1.25層の存在が階段設置の動機付けとなり、従来ハシゴを用いていた1.5層(ロフト)へのアクセスを容易にしました。


1.5層
ロフトでありながら、明るく、空調が行き届くように設計されています。


面積ではなく、体積で考える暮らし。
40-CLタイプ
コンパクト住戸でも居住スペースが増えることでより広く住まうことが可能


60-CLタイプ
空間を柔らかく仕切ることでお互いの気配を感じられつつもプライベート性が保たれる間取り


本プラン実現の困難性
本プランは鉄筋コンクリート造の独立した箱体の中で、戸建で採用される木造の2×4工法を設ける構造によって完成します。集合住宅で重要視される隣接住戸への振動対策では、コンクリートと木造の間に防振ゴムを施工するなど工夫を凝らしました。また、木造をはめ込むことにより、入居後のリフォームの自由度を上げることにも成功しました。
審査委員の評価コメント
2階建てメゾネット形式にするには高さが不足する、4.5mの階高を採用し、スキップフロア形式とすることで、各室の距離を縮め、関係性を生み出している点が高く評価できる。 また、スケルトン・インフィル形式を採用し、住戸外側の大きな箱体をRC造、内側のスキップフロア部分を木造としたことも合わせて評価したい。住人のニーズや将来的な家族構成の変化に合わせて立体的な間取り変更が容易な構造形式であり、フレキシビリティが高い。 集合住宅の価値を面積ではなく、体積で考えたことが空間デザインと結びつき、今までにないスケール感の集合住宅が実現した好例である。