マイホーム購入が視野に入ってきた。それでも、お金やタイミングなど、住宅にまつわることは、なかなかイメージができず、難しく感じることもあるでしょう。今回、ご登場いただく大石ご夫妻も、家を買いたい、という思いはあれども、なかなか第一歩が踏み出せないご様子。ならば、とばかりに住宅購入コンサルタントの方に、アドバイスを求めてやってきました。お二人の疑問は、きっと同じように住宅購入を検討中の皆さんのヒントになるはず。
住宅&保険・住宅ローン コンサルタント
寺岡 孝さん
ハウスメーカー勤務を経て、2006年にアネシスプランニング株式会社を設立。住宅の建築や不動産購入など、様々な場面で、お客様の立場からのアドバイスとサポートを行う。関東近郊を中心に住宅建築や不動産購入など、住まいにまつわること全般のコンサルティングを行う。
相談したご夫妻
大石雅彦さん・歩さん
IT関連ベンチャー企業にお勤めの雅彦さん。メディア企業にお勤めの歩さんご夫妻。ともに30代前半で、現在は都内の賃貸物件にお住まいですが、昨年、待望の第一子を授かったことをきっかけに、住宅購入を検討中。なかなか踏み出せない雅彦さんに対し、歩さんは一戸建てに興味津々。住宅購入にまつわるあれこれを調べている途中です。
よろしくお願いします!昨年、子どもが生まれて、住宅購入が視野に入ってきたのですが、夫の腰がちょっと重くて(笑)。
マイホームに憧れはありますが、踏み出すタイミングが難しくて……。他の皆さんは、どのようなきっかけで家を購入するんですか?
「他の方の事例」は確かによく聞かれます(笑)。ただ、家の買いどきに、「いまだ!」というタイミングはありません。強いて言えば、ご夫妻が「買いたい」と感じたときが買いどきです。ただ、ライフステージの変化に伴い、住宅購入を検討される方は多いです。昨年お子さんが生まれた、ということであれば、もちろんそれもライフステージの変化です。
※写真はイメージです
言うまでもないかもしれませんが、結婚する、お子さんができる、お子さんが増える、はたまたお子さんの進学のタイミングなど、ライフステージが変化するときに、購入を検討される方はやはり多い印象です。
私たちも、まさにこのパターンですね。
現在、お二人は賃貸にお住まいですが、すでに住宅を所有している方が、再度の住宅購入を検討するのも、ライフステージの変化がきっかけということもあります。転勤や転職など、職場が変わったことによって、より職場に近い場所の住宅を購入する、というケース。また、将来を見据え、資産価値の高いエリアの住宅を購入するというケースもあります。
資産価値、ということを考えると、どんな家を買えばいいのかわからなくなるという部分もあるんです。
考えを整理するために、不動産の価値を分類してみましょう。大きくこの3つが考えられるのではないでしょうか。
購入し、居住することで使用者が得られる満足感、という価値です。ご夫妻の場合、一戸建ての満足感が欲しい、という歩さんの想いも、使用価値ですし、職場に近いマンションがいい、という雅彦さんの考えも使用価値です。つまり、人それぞれの住宅に対する想いが使用価値と言えます。
立地条件がいい、などの希少性のある物件は高い。極端に言えば、超一等地の物件は希少価値があるから高価、という相対的な希少性が形成する価値です。
需要があって生まれる価値です。特殊な物件であっても、それを欲しい人が存在すれば、価値が生じる、と考えるとわかりやすいかもしれません。
ただし、(2)と(3)は投資としての要素もあります。居住用の住宅購入を検討しているのであれば、やはり大事にしたいのは(1)の使用価値。つまり、住んでいる方が、満足できる物件であることが重要ではないでしょうか。
なるほど。まずは、自分がどんな家に住みたいかを考えるわけですね。
もうひとつ、夫婦で悩んでいるのはマンションか一戸建てかというところなんです。私は一戸建てがいいなあ、と思っているんですが……。
僕は、一戸建てに魅力を感じつつも、マンションという選択肢もあるのかな、と迷っています。
なるほど。それも永遠のテーマかもしれません(笑)。ただ、前提として理解して頂きたいのは、いずれにせよ、価値を決めるのは、主に前述の3要素です。長く住むものですから、使用価値を大事にしてほしいです。その上で、一戸建ての魅力を考えるなら、次の要素ではないでしょうか。
長く住んでいれば、建て替えも考えるべき時期がやってくるかもしれません。その際、やはり一戸建てはフットワークがいい。マンションの場合、区分所有なので、建て替えに関しては、そのマンションに住む住民の方の一定数の同意が必要になります。ご自身が建て替えを望んでも、その通りにいかない可能性があることは理解しておいたほうがいいでしょう。
もう一つ忘れてはならないのは、一戸建てを購入する、とは、一戸建てを建てられるだけのまとまった土地も購入するということです。言うまでもなく、土地も資産です。資産価値を考慮するうえで、これも一戸建てならではのアドバンテージです。
一戸建てならではの魅力ですね……。
ちょっと気持ちが動いてきたでしょう(笑)。
もちろん、マンションが好きで、購入と売却を繰り返し、ずっとマンションに住んでいるような方も一部にいらっしゃいます。投資的な視点もあるかと思いますが、やはり住む人の価値観次第でしょう。もう一つ、購入の費用面でも一戸建て固有の特徴があります。
そうなんですか?
マンションを購入する場合、修繕積立の一時払い金などが発生する場合があります。一方、一戸建ての場合はこれらの費用はありません。購入時の諸費用に関しては、一戸建ての方が安くなる場合があります。もちろん、物件比較の条件によって、「必ず安くなる」と断言することはできませんが、一戸建てとマンションの購入時の諸費用の違いは、意外と見落とされがちなポイントです。
修繕積立がない一戸建ての場合、修繕にまつわる費用はご自身で用意する必要があります。物件価格だけでなく、将来必要になる修繕費も考慮して、資金計画を立てるのが重要です。
なるほど。修繕費も考えなくちゃいけないのか。一戸建てを購入したとしたら、どれくらいのスパンで修繕を考えたらいいんですか?
最近では建物の耐久性や耐候性も上がってきています。ですからあくまで目安ですが、木造の場合、15~20年で外部の修繕を考えておくといいでしょう。内部の場合はもう少し長く見てもいいかもしれません。この期間をイメージし、修繕費の貯蓄を考えておくといいでしょう。
近年の震災などへのリスク意識の高まりから、火災・地震保険が話題になることがあります。ただ、これらの保険に入る際、注意しておきたいのは、保険が家財までカバーしているか、ということです。不幸にも火災や地震の被害にあい、保険に入っているから大丈夫だと思っていても、保険がカバーしているのは建物だけで、その他、生活に必要な家財に関しては適用外ということもあります。保険に入る際は、適用範囲をよくチェックしておきましょう。
住宅購入が少しずつ分かってきたような気がします。
まだ、不思議なことがあるんです。住宅の広告なんかを見ていると、同じような広さや、立地、設備なんだけど、値段がけっこう違うものがあるような気が……。こういった差は、どうして生まれるんですか?
企業が住宅を開発する際の、土地購入価格の差などもありますが、目には見えにくい仕様の差がある場合があるんです。一例を挙げるとこんなものです。
耐震性や耐久性など、一見しただけではわからない部分にコストがかかっている物件では、その分が物件価格に反映されている場合があります。設備の豪華さなど、以外にも、こうした部分での安心感もチェックしておきたいポイントです。
長く安心して住むための性能に、コストがかかっていることがあるわけなんですね。なるほど。こうして考えていくと、将来までの住宅のビジョンが少し見えてくるような気がします。
じゃあ、次の週末は一緒にモデルハウスに行ってみようよ!
お二人が住宅の何に価値を感じるか。これを大事にして家を選んでください。調べると見えてくることもたくさんあります。しっかりと素敵な住宅像をイメージしてください。
ありがとうございました!